ヘッドホンアンプや小型オーディオ回路で負電圧が必要な場合、チャージポンプICを使えば簡単に両電源を構築できます。
本記事では、USB給電などの単電源をメインに、乾電池1本でも動作可能な設計のポイントを解説します。
1. チャージポンプICの仕組み
- 単電源(例:USB 5V)から負電圧(例:-5V)を生成
- 内部スイッチでコンデンサの充放電を繰り返し、電圧を反転
- 小型・低消費電力で、ポータブルヘッドホンアンプでも両電源化可能
- 乾電池1本(1.5V~3V)からでも動作可能なICがあり、電源が限られる場面でも利用できる
2. 実際の使用での注意点
(1) コンデンサ容量は大きくしすぎても意味がない
- 出力平滑用のコンデンサ(C2)を過剰に大きくしても、チャージポンプICの内部スイッチング電流に制約があるため、出力リップルはあまり改善されない
- データシートでは 10μF~22μF が推奨
- USB給電や乾電池1本の低電流用途では 10μF~22μFのOS-CONやフィルムコン が実用的
(2) 音声回路との距離
- 出力コンデンサをオペアンプやヘッドホンアンプの信号ライン近くに配置すると、
「周期的なスイッチングノイズ」 が音声に混入することがあります - 対策:
- 出力コンデンサは電源入力に近い位置に置く
- 信号ラインから距離をとる
- 低ESRコンデンサ(OS-CONやフィルム)を使用するとノイズが減少
(3) 配線やレイアウトも重要
- チャージポンプのスイッチングノイズは基板上で結合しやすい
- 電源ラインを太く短く引き、信号ラインから分離することでクリアな音質を確保可能
3. 実践例
- メイン電源:USB 5V給電
- サブ電源:乾電池1本(1.5V~3V)でも動作可能
- チャージポンプIC:ICL7660など
- 出力:-5V(USB)/-1.5V~-3V(乾電池1本)
- 使用コンデンサ:
- C1:充電用 10μF
- C2:出力平滑用 22μF OS-CON またはフィルムコン
- 結果:
- 出力安定
- 過剰に容量を大きくする必要なし
- 音声回路から距離をとることで、周期的なスイッチングノイズを回避
4. コンデンサ選定のポイント
- 充電コンデンサ(C1):耐圧は入力電圧の1.5倍以上
- 出力コンデンサ(C2):データシート推奨の 10μF~22μF、低ESRタイプ(OS-CONやフィルム)でリップル低減
- 容量:出力電流に応じて選定
まとめ
- チャージポンプICはUSB単電源から手軽に負電圧を作れる
- 乾電池1本からでも動作可能で、ポータブル用途にも対応
- 出力平滑用コンデンサはデータシート準拠で選定し、信号ラインから距離をとることが重要
- OS-CONやフィルムコンを使うと低ノイズで安定した負電圧を確保可能
- 正しい設計で、単電源でも自然でクリアなヘッドホン再生が実現できる
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