ヘッドホンアンプやオペアンプ回路を作るとき、「片電源(シングル電源)」と「両電源(デュアル電源)」のどちらを使うかで設計が大きく変わります。今回はそれぞれのメリット・デメリットに加えて、簡単に両電源を作る方法も紹介します。
片電源(シングル電源)の特徴
片電源は「+Vだけの電源」で動作する回路です。たとえば+5Vや+12Vだけの電源でオペアンプを動かす場合が該当します。
メリット
- 電源がシンプル
 プラスだけの電源でOKなので、電源回路が簡単。
- 部品が少なくて済む
 トランスや負電圧生成回路が不要。
- コストが安い
 電源部がシンプルな分、基板も小さく抑えられる。
デメリット
- カップリングコンデンサが必要になることが多い
 出力を0V中心の信号にするとき、DCバイアスをカットするためのコンデンサが必要。
- 信号処理の自由度が低い
 0Vを中心に振幅させることが難しい場合がある。
- 出力振幅が制限されやすい
 電源電圧の範囲内でしか動作できないので、ヘッドルームが狭くなる。
両電源(デュアル電源)の特徴
両電源は「+Vと-Vの両方を使える電源」です。0Vを基準に信号を扱えるので、オーディオ回路では特に便利です。
メリット
- 信号が0V中心で扱える
 入力・出力ともに0Vを基準にできるので、DCバイアスを気にせず設計可能。
- カップリングコンデンサを省略できる場合がある
 出力信号が0V付近で偏らないので、直結でヘッドホンに接続できる。
- 出力振幅が大きく取れる
 プラス・マイナス両方の電圧を使えるので、ヘッドホンアンプの音圧やヘッドルームが改善される。
- 回路の自由度が高い
 入力・出力回路の設計がシンプルで、ノイズ源も減らせる。
デメリット
- 電源回路が複雑
 負電圧を作る必要があるため、トランス、DC-DCコンバータ、またはチャージポンプICなどが必要。
- 部品コストがやや高い
 電源周りのICやコンデンサが増える。
- 基板サイズが少し大きくなる場合がある
 電源部の部品が増えるため。
両電源を最も簡単に作る方法
ヘッドホンアンプの小電流用途なら、実は 乾電池2本で簡単に両電源を作れる 方法があります。ポイントは以下の通り:
- 電池を直列に2本使う
 例えば1.5V×2で3Vの電圧。
- 中央を基準にする
 電池の中点を0Vと考えると、上側が+1.5V、下側が-1.5Vとしてオペアンプが動作可能。
- 低電圧オペアンプを使う
 低電圧で動くオペアンプなら、この3V両電源で十分に動作します。
この方法なら、チャージポンプやDC-DCコンバータを使わずに、乾電池だけで両電源を作れるので、基板も部品も最小限で済みます。
まとめ
| 項目 | 片電源 | 両電源 | 
|---|---|---|
| 電源 | +Vだけ | +Vと-V | 
| 設計の自由度 | 低め | 高め | 
| 出力振幅 | 制限あり | 大きく取れる | 
| カップリングコンデンサ | 必須になりやすい | 省略できる場合あり | 
| 部品数 | 少ない | 多い(ただし乾電池2本なら最小構成で可能) | 
| コスト | 安い | やや高め(電池なら安価) | 
ポイント:ヘッドホンアンプや小型オペアンプ回路では、
- 「シンプルに作りたい → 片電源」
- 「音質・信号自由度を優先 → 両電源(乾電池2本でもOK)」
という選び方が便利です。
 
  
  
  
  
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