自宅や職場だけ急にスマホが圏外になるのはなぜ?|Low-Eガラスと鉄筋コンクリートが電波を防ぐ仕組みを電気工事士が解説

スマホ・PC・格安SIM

自宅の一部屋だけ、あるいは職場の奥の席だけ、スマホの電波が急に弱くなって「圏外」や「1本」になることはないでしょうか。筆者(現役電気工事士・でんきや慎ちゃん)は公共建築・住宅設備の設計に15年ほど携わってきた経験があり、この手の相談を受けると、まず疑うのは「回線」よりも「建物」です。キャリアを乗り換えても改善しないケースの多くは、原因が建物の構造やガラスの種類にあるからです。今回は、特定の場所だけ電波が弱くなる仕組みを整理したうえで、工事や乗り換えをせずに試せる対策を解説します。

この記事の結論

✅ 特定の場所だけ圏外になる主因は「回線」より「建物の構造・窓ガラス」であることが多い
✅ Low-Eガラス(遮熱・断熱ガラス)や鉄筋コンクリート、金属系の外壁は電波を遮ったり反射したりする性質がある
✅ 原因が建物側にある場合、キャリアを乗り換えても改善しないことが多いため、先に切り分けが必要
✅ Wi-Fi通話の設定やデュアルSIMなど、工事なし・費用ゼロで試せる対策から確認するのが順番

なぜ「自宅の一室だけ」「オフィスの奥だけ」圏外になるのか

電波には、物にぶつかると「反射する」「透過する(通り抜ける)」「回り込む(回折する)」という3つの性質があります。特定の場所だけ電波が弱いときは、このどれかが強く働いていると考えられます。

近年増えている高気密・高断熱住宅では、窓にLow-Eガラス(遮熱・断熱複層ガラス)が使われることが多くなりました。ガラス表面に特殊な金属膜をコーティングして紫外線・赤外線をカットする製品ですが、この金属膜が電波も一緒に遮ってしまう性質があります。同様に、防犯・防火目的で使われる網入りガラスも、内部の金属ワイヤーが電波を弱める要因になります。壁側では、鉄筋コンクリート造の建物や、外壁にガルバリウム鋼板などの金属パネルを使った住宅も、鉄筋や金属板が電波を反射・遮断しやすいことが知られています。断熱性能や防犯性能を優先した結果として、電波が入りにくくなるという、いわば設計上のトレードオフが起きているわけです。

公共施設や住宅の設計に関わっていると、こうした「省エネ性能を上げたら電波が悪くなった」という相談は珍しくありません。新築やリフォームで窓を高性能なものに交換したタイミングで急にスマホの電波が悪くなったという場合は、回線ではなくガラスや外壁の変更を疑ってみてください。

原因の切り分け方(回線側か建物側か)

乗り換えを検討する前に、次の項目を確認すると原因の見当がつきやすくなります。

確認すること 確認方法 結果からわかること
屋外に出ると電波は入るか 玄関先やベランダで電波状況を見る 屋外で改善するなら建物側の要因が濃厚
家族の別キャリアの端末でも弱いか 同じ場所で複数キャリアの端末を試す どのキャリアでも弱いなら建物側、特定キャリアだけなら回線側の要因
窓際からの距離で変わるか 窓に近づいたり離れたりして比較 窓際で改善するならガラスの遮蔽が要因
以前は普通に入っていたか 引っ越し・窓交換・リフォームの前後を比較 変更後に悪化したなら建物側の変化が要因

これらを確認して「建物側の要因が濃厚」と分かった場合、キャリアを乗り換えても状況は変わらない可能性が高くなります。逆に、屋外でも同じキャリアだけ弱い場合は、そのエリアの基地局事情や周波数帯の問題である可能性が高くなります。

キャリアによって屋内の入りやすさに差が出る理由

電波は周波数が低いほど波長が長くなり、障害物の陰にも回り込みやすく(回折しやすく)、コンクリート壁のような遮蔽物も透過しやすいという性質があります。この、屋内や山間部にも届きやすい低い周波数帯(700〜900MHz帯)は「プラチナバンド」と呼ばれ、各キャリアが総務省から割り当てを受けて運用しています。反対に、5Gで使われる高い周波数帯は大容量の通信ができる一方で直進性が強く、壁やガラスなどの遮蔽物に弱い性質があります。

プラチナバンドの割り当て状況や基地局整備の進み具合はキャリアごとに異なるため、同じ建物の同じ場所でも「Aキャリアは入るがBキャリアは弱い」という差が出ることがあります。特に比較的新しいキャリアは、プラチナバンドの展開がエリアによって発展途上な場合があるとされているため、格安SIMや新興キャリアを検討する際は、契約前に同じ建物内で実際に電波状況を確認できると安心です。

具体的には、700〜900MHz帯のプラチナバンドは波長が30〜40cm程度と比較的長く、壁の陰にも回り込みやすい性質があります。一方で5Gの高速通信で使われる周波数帯(数GHz〜数十GHz)は波長が数センチ〜数ミリと短く、直進性が強い代わりに壁やガラス1枚でも大きく減衰してしまいます。5G対応をうたうスマホに機種変更したのに屋内では逆に電波が不安定になったと感じる場合、この周波数の違いが影響していることがあります。多くのスマホは電波状況に応じて4Gと5Gを自動で切り替えているため、屋内では4Gのプラチナバンドを掴んでいる時間が長いのが実情です。

建物側が原因のときにできる対策(工事なし)

建物側の要因が濃厚だと分かった場合でも、大掛かりな工事をせずに試せる対策があります。

  • Wi-Fi通話(VoWi-Fi)をオンにする:ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルなど主要キャリアが対応しており、設定アプリの「ネットワークとインターネット」→「SIM」→「Wi-Fi通話」から有効にできます。自宅や職場のWi-Fiに接続していれば、モバイル回線の電波が弱くても通話やSMSを利用できます。
  • デュアルSIM・2回線持ちで予備回線を用意する:メイン回線とは別に、プラチナバンドの展開状況が異なるキャリアの格安SIMをもう1枚持っておくと、片方が弱い場所でももう片方で通信できることがあります。当ブログで紹介している格安SIMの二刀流の使い分け方も参考にしてください。
  • 宅内はモバイルWi-Fiルーターや光回線のWi-Fiに任せる:自宅のスマホ利用の大半を、光回線やホームルーターのWi-Fiに接続することで、モバイル回線の弱さを実質的にカバーできます。Wi-Fiルーターの選び方はWi-Fiルーターの選び方の記事で解説しています。
  • キャリアの窓口に相談する:各キャリアは、屋内の電波が弱いエリアについて相談を受け付ける窓口や、法人・施設向けに小型基地局(フェムトセル等)を設置する制度を用意している場合があります。個人で電波を増幅する機器を無許可で設置することは電波法で規制されているため、改善したい場合はまずキャリアに相談するのが正しい順序です。

リフォーム・窓交換を検討している人へ

断熱性能を上げるための内窓設置やLow-Eガラスへの交換は、光熱費の削減効果が大きく、基本的にはおすすめできる工事です。ただし、電波が元々弱いエリアに住んでいる場合は、窓交換によって症状が悪化する可能性があるという点だけ知っておくと、工事後に「思ったより電波が悪くなった」と慌てずに済みます。心配な場合は、リフォーム業者や窓のメーカーに、電波への影響について事前に確認しておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. 電波を強くするというアプリは効果がありますか?

A. スマホアプリは実際の電波強度そのものを変えることはできません。表示や通知の見え方を変える程度にとどまるため、根本的な改善にはならないと考えておいてください。

Q. 楽天モバイルは屋内で弱いと聞きますが本当ですか?

A. 基地局の整備状況はエリアによって差があり、一概には言えません。契約前に同じ建物・同じ部屋で実際の電波状況を確認できると安心です。楽天モバイルの実体験は楽天モバイルの正直レビューで詳しく紹介しています。

まとめ

自宅や職場の特定の場所だけスマホが圏外になる場合、原因はキャリアではなく建物の構造やガラスの種類にあることが少なくありません。Low-Eガラスや鉄筋コンクリート、金属系の外壁は電波を遮ったり反射したりする性質があり、断熱性能や防犯性能を優先した結果として電波が弱くなっているケースが多いためです。乗り換えを検討する前に、屋外との比較や別キャリア端末での確認といった切り分けを行い、建物側が原因だと分かった場合はWi-Fi通話の設定やデュアルSIM、キャリアへの相談といった工事不要の対策から試してみてください。

格安SIMの選び方全般については格安SIM比較2026年版の記事、自宅のWi-Fi自体が遅いと感じる場合はWi-Fiが遅い原因の切り分け方の記事もあわせてご覧ください。

※本記事は、Low-Eガラス・網入りガラスと電波に関する各種資料、総務省が公開しているプラチナバンド・周波数帯に関する情報、各キャリアが公開しているWi-Fi通話(VoWi-Fi)の設定案内をもとに、2026年8月執筆時点で確認した内容です。電波の入り方は建物の構造・立地・キャリアの基地局整備状況によって個別に異なるため、詳しくは契約前にご利用中のキャリアや工事業者にご確認ください。

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