PCM2704 DAC Ver2を使ってみた|CX31993と聞き比べた感想と設計の特徴

組み立て済みのPCM2704 DAC Ver2の基板 スマホ・PC・格安SIM

※本記事はプロモーションを含みます。

音楽を聴くときに使っているDACを、自作キットの「PCM2704 DAC Ver2」に替えてみました。Mac miniにつないで、手持ちのCX31993搭載のスティック型DACと聞き比べた筆者の感想は、「CX31993より音が良く感じた」です。この記事では、そのキットがどんなものか、なぜ音が違うのか(作者ページに書かれている設計から)、使うときの注意点をまとめます。

先にお断りしておくと、このキットはすでに完売していて、いま同じものを買うことはできません。「これを買ってください」という記事ではなく、自作DACの一例の紹介と、聞き比べの記録として読んでください。


この記事の結論

  • 筆者の耳では、PCM2704 DAC Ver2のほうがCX31993より音が良く感じた(測定やブラインドテストはしていない、あくまで感想)
  • PCM2704は16bit/48kHzまでのチップ。数字の上ではCX31993のほうが上なのに、聞こえ方は数字どおりではなかった
  • 作者ページによると、出力オペアンプ・カップリングコンデンサを使わず、電源やクロックにも手をかけた設計。これが差の一因かもしれないが、筆者は確かめていない
  • 基板がむき出しなので、金属に触れるとショートする恐れ。スペーサーで浮かせるか、ケースに入れて使う

PCM2704 DAC Ver2とは

PCM2704は、USBにつなぐだけで音が出せるDACチップ(デジタルの音をアナログに変える部品)です。このチップを使って、nabe(なべ)さんが設計・公開した自作DACが「PCM2704 DAC Ver2」です。作者のサイト「nabeの雑記帳」に2021年に公開された記事で、「音質に全振りしたVer2」と紹介されています。基板とパーツのキットは委託先のbispaで頒布されていましたが、現在は完売しています。

設計や回路図などの詳しい内容は、作者のページが一次情報です。この記事では中身の転載はせず、概要だけを紹介します。

📎 出典:nabeの雑記帳「PCM2704 DAC Ver2」

筆者の手元の1台

組み立て済みのPCM2704 DAC Ver2の基板。青い基板に固体コンデンサが並び、左に3.5mmジャック、右にUSB-B端子がある
組み立て済みのPCM2704 DAC Ver2。右のUSB-B端子からMac miniにつなぎ、左の3.5mmジャックから音を出す

写真が筆者の手元の基板です。基板にずらりと並んだ背の高い銀色の円筒は、固体コンデンサ(820µF/6.3V)です。入力は右側のUSB-B端子、出力は左側の3.5mmジャックを使っています。基板にはRCA出力用の場所もありますが、そこは部品を付けていません。

CX31993と聞き比べた感想

Mac miniにつないで、CX31993搭載のUSB-C DACと聞き比べました。結果は冒頭のとおり、PCM2704 DAC Ver2のほうが音が良く感じた、です。

ここは正直に書いておくと、次のことは確かめていません。

  • 測定器を使った数値の比較(ノイズ、歪みなど)
  • 音量をそろえた状態での、どちらか分からないようにした聞き比べ
  • どんなヘッドホン・イヤホンでも同じ結果になるか

同じ音量でも、聞こえ方は機器や好みで変わります。「筆者の環境では、そう感じた」という記録として受け取ってください。

そのうえで筆者の率直な感想を書くと、格安のスティック型DACと比べること自体がおこがましいと感じました。基板には、ずらりと並んだ固体コンデンサ、精度の高い基準クロック(TCXO)、パナソニック製のフィルムコンデンサなど、音に効く部品がおごられています。数百円〜千円台の格安DACとは、そもそも部品にかけているお金と手間がまったく違います。

数字ではCX31993が上。それでも違いが出る理由は?

スペックだけを見ると、CX31993のほうが上です。

PCM2704(Ver2) CX31993
対応するビット数 16bit 最大32bit
対応する周波数 最大48kHz 最大384kHz

PCM2704側は作者ページの記載、CX31993側は以前の記事でMac上から読み取った対応範囲です。

それでも「音が良く感じた」のは、DACはチップの数字だけで音が決まるわけではないからだと考えられます。音は、チップのあとに続く回路や、電源の質にも左右されます。作者ページには、このキットの設計が次のように書かれています。

設計の特徴(作者ページの記載) ひとことで言うと
出力オペアンプなし 音の通り道に、増幅用のICを挟まない
出力カップリングコンデンサなし 音の通り道に、直流を止めるコンデンサを挟まない
低ノイズの電源(ADP150を2個) ノイズの少ない電源回路を使っている
負電源にMAX889 マイナス側の電源も専用に用意している
パッシブLPF 抵抗とコンデンサだけで、高い周波数の不要な成分を落とす
TCXO(12MHz) 精度の高い基準クロックを使っている

一般に、音の通り道に部品が少ないほど、音が変化する要素も減ると言われます。ただし、どの項目が筆者の聞いた差に効いているのかは分かりません。筆者は聞き比べただけで、回路を測ったわけではないからです。

なお、作者ページには弱点も正直に書かれています。出力電圧が約1.3Vppと小さいことです(作者は「1Vppあれば最低限問題は起こらない」としています)。

使うときの注意点

後段のアンプは必須

このDACは、音を増幅せず、1倍のまま素直に出力する設計です。出力オペアンプを使わないのは音のためですが、その代わり、ヘッドホンやスピーカーを力強く鳴らす力はありません。筆者は、後ろにヘッドホンアンプやアンプ内蔵スピーカー(アクティブスピーカー)をつなぐのが必須だと考えています。ヘッドホンを直接つないで「音が小さい」「物足りない」と感じたら、それはDACの不良ではなく、この設計の性格です。

基板がむき出し。ショートに注意

キットの基板はカバーがなく、裏面にはハンダ付けの金属部分が出ています。金属製の机やネジ、ケーブルの先などが触れると、ショートして壊れる恐れがあります。

  • 基板の取り付け穴にスペーサー(支柱)をつけて、机から浮かせる。電気を通さないナイロン製が安心です
  • できればケースに入れる。ケースの大きさは基板に合わせて選ぶ
  • 通電中に、基板の上へ金属や飲み物を置かない

筆者は今回むき出しのまま使っていますが、長く使うならスペーサーかケースは付けたほうがよいと感じます。穴の大きさは基板の実物で確認してから、合うネジのスペーサーを選んでください。

USB信号がないときの挙動

作者ページには、USBの通信がない状態で電源だけが入っていると、出力にオフセット(直流の電圧)が出る現象が起こると書かれています。ヘッドホンをつけたまま、パソコンの電源を落としたり接続を抜き差ししたりするのは避けたほうが安心です。

キットは完売。自作する人は部品集めから

基板とパーツをまとめたキットは完売しています。同じものを作りたい場合は、作者ページの部品表をもとに、基板や部品を自分で用意する必要があります。作者ページによると、個別の部品の頒布はしていないとのことです。ハンダ付けの経験がない人には、少し大変かもしれません。

手軽に試したい人は、CX31993のDACから

自作はハードルが高い、という人には、まず市販のCX31993搭載DACが手軽です。使い方や選び方はUSB-C DAC音質比較の記事で詳しく書いています。

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※スペーサーは、基板の穴の大きさに合うサイズか確認してから選んでください。価格は時期によって変わります。

よくある質問(FAQ)

Q. PCM2704 DAC Ver2は、いまも買えますか?

A. 作者ページによると、委託先のbispaでのキット頒布は完売しています。この記事を書いた時点で、筆者は入手方法を把握していません。

Q. 16bit/48kHzまでで、音は足りるのですか?

A. 一般にCDは44.1kHz/16bitなので、CDや多くの音楽配信ならカバーできる範囲です。ハイレゾ音源は、機器側で規格を下げて再生されます。

Q. CX31993より必ず音が良いのですか?

A. そうとは言えません。この記事は筆者1人の耳による感想で、測定はしていません。

まとめ

自作DAC「PCM2704 DAC Ver2」は、チップの数字ではCX31993に及ばないものの、筆者の耳では「CX31993より音が良く感じた」DACでした。理由は、作者ページに書かれた設計(オペアンプなし・カップリングコンデンサなし・低ノイズ電源・TCXOなど)や、固体コンデンサ・パナソニック製フィルムコンデンサといった部品の質にあると筆者は見ていますが、測って確かめてはいません。格安DACとは別物として考えたほうがよい1台です。増幅せず1倍で出力する設計なので、後ろにはアンプが必須です。キットは完売なので、同じものを作る人は部品集めが必要です。使うときは、基板がむき出しなので、スペーサーかケースでショートを防ぎましょう。設計の詳細は、作者のページをご覧ください。

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