この記事の結論(先にお伝えします)
- 我が家のエアコンは、2022年の設置から約4年で2回も冷えなくなり、室内機を交換しました。症状は2回とも「ガス漏れ」です。
- 同じ家・同じ施工なのに、前のエアコンは7年、他の部屋の3台も問題なし。壊れたのはこの1台だけでした。
- 取り外した室内機の現物を見ると、配管の根元が「黒く」腐食していました。これは話題の「蟻の巣状腐食」とは様子が違い、硫化水素(卵が腐ったようなニオイの気体)が銅を腐食させてできたピンホール(小さな穴)と考えられます。
- なぜこの1台だけか=ドレンまわりから硫化水素にさらされたこと+冷媒がR32になり銅管が薄くなったことが重なったため、と見ています。
- 「ガスを補充してもすぐ効かなくなる」のは、腐食でできた小さな穴からガスが漏れ続けているサインです。
現役で電気の仕事をしている私(でんきや慎ちゃん)の自宅で、ちょっと信じがたいことが起きました。2022年に設置したエアコンの室内機が、4年のあいだに2回も壊れたのです。症状はどちらも「冷えない=ガス漏れ」。
業者さんからは「ドレン(排水)と室内機の接続部分が怪しい」と言われました。でも、よくよく考えるとそれだけでは説明がつかないのです。この記事では、現役電気屋として「本当の原因は何なのか」を、自宅の状況から論理的に絞り込んでみます。同じようにエアコンが短期間で何度もガス漏れする方の参考になればと思います。
時系列:4年で室内機が2回ダメになった記録
| 時期 | 起きたこと |
|---|---|
| 2022年 | 新しいエアコンを設置 |
| 2023年(約1年後) | 冷えなくなる。業者が無償でガス補填+配管交換 |
| その1週間後 | また冷えなくなる → 室内機を本体交換(1回目) |
| 2026年6月 | 再び冷房が効かなくなる → 本日交換(2回目)。業者いわく「前回と同じ、ドレンと室内機の接続部分が怪しい」 |
取り外した室内機を見ると、熱交換器が白く粉を吹いたように腐食していました。


「ガスを入れても1週間で効かなくなった」の意味
1回目のとき、業者さんは無償でガス(冷媒)を補充してくれました。ところがたった1週間でまた冷えなくなったのです。当時は「ハズレを引いたかな」くらいに思っていましたが、今ふり返ると、これは大事なサインでした。
エアコンは、冷媒ガスを配管の中で循環させて熱を運びます。ガスを補充してもすぐ効かなくなるのは、多くの場合どこかからガスが漏れ続けているからです。コップに水を注いでも、底に穴が空いていればすぐ空になるのと同じ。熱交換器の銅管に、小さな穴(ピンホール)が開いていたと考えると筋が通ります。
💡 電気屋メモ:「ガス補充してもすぐ冷えなくなる」ときは、ガス不足そのものより“漏れている穴”の存在を疑うべきです。穴が塞がっていなければ、何度補充しても同じことの繰り返しになります。
業者の「ドレン接続部が原因」説に、私が引っかかった理由
業者さんは「ドレンと室内機の接続部分が怪しい」と言いました。たしかに、その部分は結露水も集まりやすく、外からの空気も入りやすい場所です。腐食が起きやすい条件はそろっています。
でも、私はここで引っかかりました。なぜなら——
- 前に同じ場所に付けていたエアコンは、同じ施工で7年もった
- 同じ家の他の部屋にあるエアコン3台も、同じような施工で問題なし
- なのに、この1台だけが4年で2回も壊れた
もし原因が「ドレンの施工」だけなら、前の機種でも、他の3台でも同じように壊れるはずです。逆に「機種が悪い」だけでもありません(同じ機種が全国でみんな壊れるわけではない)。この1台だけがやられたのは、「この場所ならではの条件」と「この機種ならではの弱さ」が“重なった”から——そう考えると筋が通ります。次で、その中身を見ていきます。
たどり着いた答え:「硫化水素によるピンホール腐食」+「R32冷媒の薄い銅管」
原因を調べていくと、ネット上では「蟻(あり)の巣状腐食」という現象がよく出てきます。室内の消臭剤・殺虫剤などから出るカルボン酸が、銅管の内部をアリの巣のようにトンネル状に腐食させる——というものです。正直、私もこの言葉は今回はじめて知りました。
ただ、取り外した室内機の現物を見ると、様子が違いました。内部がトンネル状に侵される蟻の巣状腐食ではなく、配管の根元が「黒く」腐食していたのです。そして、この黒い腐食こそ、私が本当の原因だと考える硫化水素(りゅうかすいそ)のサインでした。
硫化水素によるピンホール腐食とは
硫化水素は、卵が腐ったようなニオイのする気体で、下水・浄化槽・排水まわりなどで発生します。やっかいなのは、硫化水素が銅と反応すると「硫化銅」という黒い腐食物をつくり、銅管を局所的にむしばんで小さな穴(ピンホール)を開けてしまうこと。現物の配管根元が黒くなっていたのは、まさにこの硫化銅の色です。穴が開けば、そこから冷媒ガスが漏れ続けます。
💡 電気屋メモ:「穴が開いた」こと自体が手がかり
銅管は、温度差や空気による酸化でも表面が少しずつ腐食します。ただしその手の腐食は“表面が痛む”だけで、貫通する穴(ピンホール)まではなかなか開きません。逆に言えば、ガスが漏れるほどの穴が開いた=もっと攻撃的な要因が働いたということ。実際、現物も全体は白っぽい酸化でしたが、穴の周辺だけが黒い局所腐食——硫化水素が、そこをピンポイントで食い破ったと考えると筋が通ります。
では、その硫化水素はどこから来たのか。怪しいのが、業者さんも指摘していたドレン(排水)と室内機の接続部分です。ドレン配管は排水まわりとつながっているため、条件によっては硫化水素を含む空気が室内機側へ入り込みやすいのです。業者の「ドレン接続部が怪しい」という見立ては、“入口”としては当たっていたのかもしれません。
新築当初はなかった?「時間の経過」で硫化水素は増えていく
もうひとつ、私が考えているのが「時間の経過」です。新築・設置したばかりの頃は、ドレン配管の中もきれいで、硫化水素はほとんど出ていなかったはずです。ところが年月が経つにつれ、ドレン配管の内側には汚れ(ヘドロ状の堆積物)が少しずつたまっていきます。この堆積物の中で雑菌が繁殖すると、硫化水素が発生し、だんだん増えていくのです。
これは「時間差」の説明にもなります。まだ堆積物が少なく硫化水素も弱かった時期に使っていた前のエアコン(R410A・厚い銅管)は7年もちました。一方、堆積が進んで硫化水素が出やすくなった近年に、R32の薄い銅管の機種が当たってしまった——そう考えると、「なぜ“今”このタイミングで壊れたのか」もつじつまが合います。
なぜ「この1台だけ」だったのか=冷媒R32と銅管の薄さ
もうひとつの鍵が冷媒(ガス)の種類です。我が家の7年もった前のエアコンは、古いタイプの「R410A」という冷媒でした。一方、2012年ごろからエアコンの冷媒は「R32」へ切り替わっています。
R32は環境にやさしい一方で、R410Aより圧力が高く、銅管に大きな負担がかかります。さらに各社がコストや効率のために熱交換器の銅管を薄く作る傾向があり、これが腐食への弱さにつながると指摘されています。
💡 ここが核心:同じドレンまわりの条件でも、「古い冷媒R410A・厚い銅管」の前の機種は7年もちました。ところが「新しい冷媒R32・薄い銅管」の今の機種は、同じ硫化水素にさらされても銅管が薄いぶん早くピンホールに達し、4年で2回ガス漏れ。硫化水素という“攻撃”に、R32世代の薄い銅管が耐えきれなかった——これが明暗を分けたと見ています。
つまり、原因はこう考えられる
私の見立てをまとめると、こうなります。
- ドレン接続部から硫化水素を含む空気が室内機に入り込んだ(業者が指摘した場所が“入口”だった)
- 硫化水素が銅と反応し、配管の根元を黒く腐食させてピンホール(小さな穴)を開けた
- R32世代の薄い銅管だったため、前のR410A機より早く穴に達した(だからこの1台だけ・短期間で2回)
- 穴からガスが漏れ、「補充してもすぐ冷えない」を繰り返した
※あくまで自宅の状況から絞り込んだ推定です。腐食の原因物質を特定するには専門の分析が必要なので、「断定」ではなく「最も筋の通る仮説」としてお読みください。
同じ失敗を防ぐには
では、これから設置・買い替えをする人は何ができるのか。電気屋として現実的な対策を挙げます。
- ドレンまわりの硫化水素・逆流対策を最優先:弱点になりやすいドレン接続部に防臭トラップ・逆止弁・エアカットバルブを付け、硫化水素を含む空気・臭気・虫の侵入を防ぐ
- 排水の出口にも注意:ドレンの排水先が下水・浄化槽・排水桝の近くだと硫化水素を吸い込みやすい。可能なら出口の位置を見直す
- 保温材のつなぎ目・端の処理を確認:銅管に湿気と空気が触れにくいよう、テープ巻き・端末処理が丁寧かを業者に確認
- 「ガスを入れてもすぐ漏れる」なら銅管の穴を疑う:補充の繰り返しではなく、熱交換器(室内機)交換や保証対応を検討
- 保証・PL対応の確認:短期間で繰り返すガス漏れは、メーカー保証や初期不良として相談する価値があります
ドレンまわりの結露・逆流対策アイテム
根本原因が硫化水素による腐食なら、ドレン接続部からの硫化水素・臭気・虫の侵入対策は弱点を減らすうえで有効です。我が家も今回あらためて取り付けました。Amazon・楽天で探せるリンクを置いておきます(ドレンホースの径=一般的に内径14〜16mm前後を確認してから選んでください)。
まとめ
- エアコンが短期間で何度もガス漏れするときは、熱交換器の銅管のピンホール腐食を疑う。現物が黒く腐食していれば、ネットで話題の蟻の巣状腐食より硫化水素が原因かもしれない。
- 硫化水素の“入口”はドレン接続部。同じドレン条件でも前のR410A機は7年、R32の薄い銅管の今の機種は4年で2回=薄い銅管が硫化水素に耐えられなかったのが濃厚。
- ガス補充してもすぐ効かなくなるのは、銅管に穴が開いて漏れ続けているサイン。
- 対策は設置環境の空気・保温材の処理・ドレンまわりの結露対策。繰り返すなら保証・PL対応も相談を。
エアコンの選び方や買い替えについては、こちらの記事もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. エアコンを買って数年でガス漏れしました。なぜ?
A. 熱交換器の銅管にピンホール(小さな穴)が開いている可能性があります。配管が黒く腐食している場合は、ドレンまわりから入った硫化水素が銅を腐食させたケースが考えられます(ネットで話題の「蟻の巣状腐食」とは見た目が異なります)。近年のR32冷媒・薄い銅管の機種は、腐食が穴に達しやすい傾向があります。
Q. ガスを補充してもすぐ冷えなくなります。なぜ?
A. 銅管のどこかからガスが漏れ続けている可能性が高いです。腐食による熱交換器の穴が原因のことがあり、その場合は補充だけでは直りません。室内機交換や保証対応を検討してください。
Q. 同じ家でも壊れるエアコンと壊れないエアコンがあるのはなぜ?
A. 設置環境が同じでも、冷媒の種類(R410AかR32か)や熱交換器の銅管の作りが機種ごとに違うためです。我が家でも、古い冷媒の機種は7年もち、新しい機種だけが短期間で2回ガス漏れしました。
Q. 腐食を防ぐために自分でできることは?
A. ドレン接続部に防臭トラップ・逆止弁などを付けて硫化水素や臭気の侵入を防ぐ、ドレンの排水先を下水・排水桝から離す、設置時に保温材の端末処理を丁寧にしてもらう、などが有効です。
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