「エアコンの電気代が夏になると一気に跳ね上がる」「扇風機やサーキュレーターで少しでも涼しく、安くできないか」——毎年この時期になると、お客さんからよく聞かれる質問です。
筆者(現役の電気工事士・でんきや慎ちゃん)は、仕事柄たくさんの家庭の家電と電気の使い方を見てきました。結論から言うと、扇風機・サーキュレーターの電気代はエアコンとは「桁が1つ違う」ほど安く、上手に併用すればエアコン単体より涼しく、しかも安く過ごせます。
この記事では、3つの電気代を実際の数字で比較し、夏の電気代を下げる具体的な使い方を、専門用語を避けて正直に解説します。
- 1時間あたりの電気代は エアコン 約15〜20円 / 扇風機・サーキュレーター 約0.5〜1.5円。差は10倍以上。
- 扇風機とサーキュレーターの電気代はほぼ同じ。違いは「風の質」。涼むなら扇風機、空気をかき混ぜるならサーキュレーター。
- いちばん効くのはエアコンとの併用。風で体感温度を下げ、エアコンの設定温度を1℃上げるだけで月300〜450円節約できる。
- 買い替えるならDCモーター。電気代がACモーターの半分以下で、つけっぱなしでも気にならない。
まず結論:3つの電気代を比較するとこうなる
電気代は「消費電力(W)÷1000 × 使う時間 × 電気の単価」で計算します。2026年は単価が地域・契約で27〜33円/kWhくらいなので、この記事では分かりやすく1kWhあたり31円で計算します。
| 家電 | 消費電力の目安 | 1時間の電気代 | 8時間使った場合 |
|---|---|---|---|
| エアコン(冷房・6畳) | 約400〜500W | 約13〜16円 | 約100〜130円 |
| エアコン(冷房・10畳) | 約600〜700W | 約19〜22円 | 約150〜175円 |
| 扇風機(ACモーター) | 約30〜50W | 約0.9〜1.5円 | 約7〜12円 |
| 扇風機(DCモーター) | 約15〜25W | 約0.5〜0.8円 | 約4〜6円 |
| サーキュレーター(ACモーター) | 約25〜40W | 約0.8〜1.2円 | 約6〜10円 |
| サーキュレーター(DCモーター) | 約15〜25W | 約0.5〜0.8円 | 約4〜6円 |
※エアコンは外気温・設定温度・部屋の断熱で大きく変わります。立ち上がり(運転開始直後)はもっと電力を食い、室温が安定すると下がります。あくまで目安として見てください。
表を見れば一目瞭然ですが、エアコンと扇風機・サーキュレーターでは電気代が10倍以上違います。扇風機やサーキュレーターは1日中つけても1ヶ月で200円前後。「つけっぱなしで電気代が心配」という声をよく聞きますが、扇風機・サーキュレーター単体ならほとんど気にしなくて大丈夫です。
電気代を本気で下げたいなら、見るべきは消費電力の大きいエアコンのほうです。エアコンの電気代を細かく知りたい方は、エアコンつけっぱなしは本当に安い?電気代を実測の考え方で検証もあわせて読んでみてください。
扇風機とサーキュレーター、電気代はほぼ同じ。違いは「風の質」
「扇風機とサーキュレーター、どっちが電気代が安いの?」とよく聞かれますが、上の表のとおり電気代はほぼ同じです。同じモーターの種類(AC同士・DC同士)で比べれば、差は1時間あたり0.数円。気にするほどの違いはありません。
では何が違うのか。風の性質です。
- 扇風機:広くてやわらかい風を、おもに「人に当てて涼む」ための家電。首振りで広い範囲に風を送れます。
- サーキュレーター:直線的で強い風を、おもに「部屋の空気をかき混ぜる」ための家電。遠くまで風が届き、天井や床にたまった空気を循環させます。
筆者は仕事柄サーキュレーターを家で5台使い分けていますが、選び方・置き方にはコツがあります。詳しくはサーキュレーターを5台使い分ける電気工事士が、選び方と置き方のコツを正直に話しますで本音を書いているので、買い替えを考えている方は参考にしてください。
ざっくり言うと、自分が直接涼みたいなら扇風機、エアコンと組み合わせて部屋全体を効率よく冷やしたいならサーキュレーター、という使い分けがおすすめです。
ACモーターとDCモーターで、電気代はここまで変わる
扇風機・サーキュレーターを買い替えるなら、必ず覚えておいてほしいのがモーターの種類です。
- ACモーター:昔からある一般的なタイプ。本体価格が安い(2,000〜4,000円台)。消費電力はやや高め。
- DCモーター:近年主流になった省エネタイプ。本体価格はやや高い(6,000〜15,000円台)が、消費電力がACの半分以下。風量の細かい調整や、微弱なそよ風運転ができる。
電気代だけ見ると、DCモーター扇風機を弱運転で使えば1時間あたり0.5円を切ることもあり、ひと夏つけっぱなしでも数百円程度です。
「本体が高いDCを買って元が取れるのか?」とよく聞かれますが、電気代だけで元を取ろうとすると年単位で時間がかかります。正直に言えば、DCモーターの本当の価値は電気代より「静かさ」と「弱風の心地よさ」です。寝室で一晩中つけても気にならない静かさと、肌に優しいそよ風。ここに価値を感じる人にはDCを、とにかく安く済ませたい人にはACを、と筆者は案内しています。
寝室で長時間使うならDCモーター、リビングでサッと涼むだけならACモーターで十分です。
いちばん効くのは「エアコンとの併用」
ここまで読んで分かるとおり、扇風機やサーキュレーターを単体で使っても、電気代の節約効果はたかが知れています(もともと安いので)。
本当の節約効果は、エアコンと併用したときに生まれます。
仕組みはシンプルです。扇風機やサーキュレーターで風を浴びると、汗が蒸発して体感温度が2〜3℃下がります。つまり、エアコンの設定温度を1〜2℃上げても、同じくらい涼しく感じるということです。
エアコンは設定温度を1℃上げるだけで、消費電力が約10〜13%下がります。1日8時間使うと、1日あたり約11〜15円、1ヶ月で約330〜450円の節約になります。
一方で、扇風機・サーキュレーターを併用して増える電気代は1ヶ月で200円前後。差し引きしても、しっかりおつりがきます。「風を足してエアコンの設定温度を上げる」——これが夏の電気代を下げる、いちばん現実的で効果の大きい方法です。
夏の節電全体については夏の電気代を下げる節電術|現役電気屋が本音で教えるエアコン・家電の使い方や、エアコンの電気代を月1,000円下げた7つの使い方にもまとめています。
冷房のときの正しい置き方
併用するときに大事なのが「置き方」です。間違えると効果が出ません。ポイントは冷たい空気の性質を知ることです。
冷たい空気は重いので、部屋の下のほう(床付近)にたまります。逆に暖かい空気は天井付近にたまる。だから、何もしないと「足元は寒いのに顔のあたりは暑い」というムラができ、エアコンは「まだ暑い」と判断して余計に働いてしまいます。
これを解消するのがサーキュレーター(または扇風機)です。
- 基本の置き方:エアコンと対角になる位置にサーキュレーターを置き、エアコンに向けて風を送ります。床にたまった冷気をエアコン側へ循環させ、部屋全体に冷気を行き渡らせるイメージです。
- 首振りを使って、部屋全体の空気をゆっくりかき混ぜるとさらに効果的です。
- 自分が直接涼みたい場合の扇風機は、体に当てるだけでなく、ときどき部屋の空気を回す向きにも使うと、エアコンの効きが良くなります。
空気のムラがなくなると、設定温度を上げても部屋全体が均一に涼しくなり、結果としてエアコンの稼働が減って電気代も下がります。
古いエアコンほど、風を足して設定温度を上げる効果が大きく出ます。10年以上前の機種は省エネ性能が今より低く、設定温度を下げて無理に冷やすと電気代が跳ね上がるからです。「エアコンが古くて電気代が高い」と感じる方は、買い替えの検討も一つの手です(→夏のエアコン選び方2026)。なお、消費電力を実際に測りたいときはワットチェッカーが便利です。
やってはいけない・誤解しがちな使い方
正直に、効果が薄い・逆効果になる使い方も挙げておきます。
- 誰もいない部屋で扇風機をつけっぱなし:扇風機は「人の肌の汗を飛ばして涼しく感じさせる」家電です。部屋の温度を下げる力はありません。無人の部屋でつけても涼しくならず、電気のムダ(とはいえ数十W程度ですが)。
- エアコンの代わりに扇風機だけで猛暑をしのぐ:室温が体温に近い猛暑日は、扇風機の風がかえって熱風になり、熱中症のリスクが上がります。真夏はエアコンが基本、扇風機・サーキュレーターは補助と考えてください。
- サーキュレーターを人に当て続ける:強い直線風を体に当て続けると、体が冷えすぎたり乾燥したりします。サーキュレーターは「空気を回す」道具なので、基本は壁や天井、エアコンに向けて使うのが正解です。
- フィルターやホコリの放置:扇風機・サーキュレーターの羽根やガードにホコリがたまると風量が落ち、同じ電気代でも効果が下がります。シーズン初めに掃除しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 扇風機とサーキュレーター、両方買う必要はありますか?
A. 必須ではありません。涼むのが目的なら扇風機1台、エアコンの効率を上げたいならサーキュレーター1台でも十分です。両方あると「人を涼ませる×部屋の空気を回す」を分担できて便利、という程度に考えてください。
Q. サーキュレーターを扇風機代わりに体に当ててもいい?
A. 短時間ならOKですが、風が強く直線的なので、長時間当て続けると体が冷えやすいです。涼む目的なら扇風機のほうが快適です。
Q. DCモーターは本当に電気代の元が取れますか?
A. 電気代だけで本体価格の差を取り戻すには年単位かかります。DCの本当の価値は「静かさ」と「弱風の心地よさ」。寝室など長時間使う場所でこそ価値が出ます。
Q. エアコンと併用すると、トータルの電気代は増えませんか?
A. 増えません。扇風機・サーキュレーターの電気代(月200円前後)より、設定温度を上げて減るエアコンの電気代(月300〜450円)のほうが大きいため、差し引きで安くなります。
まとめ
- 1時間の電気代は エアコン 約15〜20円 / 扇風機・サーキュレーター 約0.5〜1.5円。10倍以上の差。
- 扇風機とサーキュレーターの電気代はほぼ同じ。違いは「涼む(扇風機)」か「空気を回す(サーキュレーター)」か。
- 単体で使っても節約効果は小さい。エアコンと併用して設定温度を1℃上げるのがいちばん効く(月300〜450円節約)。
- 冷房時はエアコンの対角に置いてエアコンへ風を送るのが基本。
- 買い替えるなら、長時間使う場所はDCモーター、サッと使う場所はACモーターで十分。
夏の電気代は「我慢」ではなく「使い方」で下げられます。扇風機・サーキュレーターという安い味方を上手に使って、涼しく賢く夏を乗り切ってください。
電気代をもっと下げたい方は、電気代が高い家庭がまず見直す家電ワースト5と対策もあわせてどうぞ。
▶あわせて読みたい:エアコンの冷房と除湿(ドライ)はどっちが電気代が安い?正しい使い分け
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