お盆に実家へ帰ったら、外より家の中の方が暑かった。エアコンはついているのに設定温度が30℃だった。あるいは、そもそもつけていなかった。
「なんでつけないの」と言うと、「これくらい大丈夫」「もったいない」と返ってくる。押し問答になって、結局そのまま帰ってきてしまう。
筆者も電気工事士として高齢のお宅にお邪魔することがありますが、真夏でもエアコンを使っていない家は珍しくありません。この記事では、なぜ親世代がエアコンを嫌がるのか、そして「説得」以外にどんな手があるのかを整理します。
熱中症で運ばれる人の半分以上は高齢者、しかも多くは家の中
まず数字を見てください。総務省消防庁の「熱中症による救急搬送状況」では、令和6年(2024年)5〜9月の搬送人員のうち65歳以上の高齢者が57.4%を占めています。半分以上です。
そして発生場所として最も多いのが「住居」です。東京消防庁の統計でも、搬送された高齢者の多くが自宅で発症しています。「外で農作業をしていて倒れた」よりも、「家の中でじっとしていて倒れた」方が多いのが実態です。
つまり、実家のエアコン問題は「快適さ」の話ではなく、命に直結する話だということです。
親がエアコンを嫌がる理由は、たいてい3つのどれか
1. 電気代がもったいない
いちばん多い理由です。ただ、ここには誤解が混じっていることがあります。「こまめに消す」方が電気代が高くつく場面があるのに、消したり点けたりを繰り返しているケースです。エアコンは室温を下げるときに最も電力を使うので、短時間の外出なら点けっぱなしの方が安いことがあります。
2. 冷房の風が体に合わない
「冷えすぎて体がだるくなる」という訴えも本当によく聞きます。これは我慢の問題ではなく、風が直接体に当たっているか、設定温度が低すぎることが原因のことが多いです。風向きを上向きに固定して、設定を27〜28℃にするだけで印象が変わることがあります。
3. そもそも暑さを感じにくくなっている
これが一番やっかいです。加齢とともに暑さやのどの渇きを感じる力が落ちます。本人は「大丈夫」と本気で思っているので、体感を根拠に説得しても噛み合いません。本人の感覚を疑うのではなく、感覚に頼らない仕組みを作る方が現実的です。
「説得」より効くのは、判断を人から機械に移すこと
筆者がおすすめしたいのは、話し合いで行動を変えようとするのをやめて、暑いかどうかの判断を機械に肩代わりさせる方向です。具体的には次の3つです。
① 大きく表示される温湿度計を、目に入る場所に置く
いちばん安く、いちばん揉めない方法です。「暑い気がする/しない」ではなく「32℃と出ている」という共通の事実ができると、話が対立になりません。
選ぶポイントは文字が大きいことと、熱中症の危険度を色やマークで知らせてくれるものであることです。数字だけだと、結局「32℃でも平気だ」で終わってしまいます。
② スマートリモコンで、離れて暮らす家族が状況を確認できるようにする
スマートリモコンは、エアコンの赤外線リモコンの代わりをする小さな箱です。Wi-Fiにつなぐと、スマホからエアコンを操作できます。工事は不要で、コンセントに挿すだけのものがほとんどです。
ここで大事なのは「遠隔で勝手に点ける」ことではありません(それをやると確実に揉めます)。温度計つきの機種を選んで、実家の室温をこちらから見られるようにすることが本題です。「今そっち33℃になってるよ」と電話できるだけで、状況はかなり変わります。
③ 自動運転にして、リモコンを触らない運用にする
意外と効くのがこれです。設定温度28℃・自動運転にして、あとはリモコンに触らないと決めてしまう。切ったり点けたりの判断そのものをなくす方法です。
「つけっぱなしは電気代が怖い」という不安には、①の温湿度計と電力使用量の話をセットで見せると納得してもらいやすくなります。
帰省中にやっておくと効く、地味な確認
| 確認すること | なぜ大事か |
|---|---|
| フィルターの目詰まり | 目詰まりすると効きが落ち、「効かないから使わない」の入口になります |
| 風向きが人に直撃していないか | 「冷房が体に合わない」の多くはこれが原因です |
| リモコンの電池 | 電池切れのまま放置され、そのまま夏を越そうとしていることがあります |
| 室外機のまわりに物が置かれていないか | 吹き出しをふさぐと効きが落ち、電気代も上がります |
| 設置から何年たっているか | 10年を大きく超えていると、効きの悪さは設定ではなく寿命の可能性があります |
フィルター掃除と風向き変更は、帰省中の30分でできます。「使わせる」より先に「使いたくなる状態にする」方が、結果的に近道です。
それでも動いてくれないときの、最後の一手
正論で押しても動かないときは、頼み方を変えると通ることがあります。
- 「体のために」ではなく「こっちが心配で仕事が手につかないから」と、自分の都合として頼む
- 「つけて」ではなく「この温度計が赤くなったらつけて」と、条件を1つだけ決める
- 孫がいるなら「孫が来たときのために」を口実にする
行動を変えるより、判断の基準を1つ置いてくる方が定着します。
まとめ
- 熱中症で運ばれる人の57.4%は65歳以上、発生場所は住居が最多(消防庁)
- 親がエアコンを嫌がる理由は「電気代」「風が体に合わない」「暑さを感じにくい」のどれかが多い
- 説得より、大きい温湿度計・温度が見えるスマートリモコン・自動運転の固定で判断を機械に移す
- 帰省中はフィルター・風向き・電池・室外機まわりを確認しておく
実家に帰ったついでにできることは、エアコン以外にもあります。古い家電の火災リスクについては帰省したら家電もチェックしてみてください|実家の古い家電に潜む火災リスク、親のスマホの安全設定については実家の親のスマホ、危ない設定のままかもしれませんにまとめています。
エアコン自体の調子が悪そうならエアコンが効かない・水漏れ・異音がしたら|緊急時の切り分けフローを、台風前の室外機の点検は台風が来る前に、エアコンの室外機は大丈夫ですかを参考にしてください。
出典
- 総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」令和6年(5〜9月)確定値
- 東京消防庁「熱中症に注意」搬送データ
この記事が役に立ったら「いいね」で応援お願いします!


