「エアコンをつけた瞬間、家じゅうの電気がパチンと消えた」——夏になると、こんな相談が一気に増えます。梅雨が明けてエアコンをフル稼働させる時期は、一年でいちばんブレーカーが落ちやすい季節です。
ブレーカーが落ちると焦りますが、実は「どのブレーカーが落ちたか」を見るだけで、原因のほとんどは見分けられます。そして、原因によって「自分で直していいもの」と「絶対に電気のプロに任せるべきもの」がはっきり分かれます。ここを間違えると、ただの停電で済むはずが感電や火災につながることもあります。
この記事では、現役の電気工事士である筆者が、ブレーカーが落ちる原因の見分け方・正しい対処・夏に落とさないための予防策を、できるだけやさしく解説します。
先に結論(落ちたブレーカーで原因がわかります)
- 家全体が真っ暗=アンペアブレーカー(使いすぎ)→ 使う家電を減らせば復旧。繰り返すなら契約アンペアの見直し
- 一部の部屋だけ消えた=安全ブレーカー(その回路の使いすぎ・ショート)→ その回路の家電を減らす
- 「漏電」表示のレバーだけ落ちた=漏電ブレーカー(漏電のサイン)→ 放置厳禁。原因の回路を特定して電気業者へ
ブレーカーは3種類ある(まずここを押さえる)
多くのご家庭の分電盤(ブレーカーが並んでいる箱)には、役割の違う3種類のブレーカーが入っています。原因を見分けるには、この3つの違いを知っておくのが近道です。
① アンペアブレーカー(契約ブレーカー・サービスブレーカー)
分電盤のいちばん左にある、大きめのスイッチです。電力会社と契約したアンペア数(30A・40Aなど)を超えて電気を使うと、家全体の電気を止めます。色つきで「30」「40」などと数字が書いてあることが多いブレーカーです。
ひとつ、電気屋として補足しておきたいことがあります。最近はスマートメーターの普及で、このアンペアブレーカーが分電盤から消えているお宅が増えています。スマートメーター自体に同じ機能が組み込まれたため、役割を終えて撤去されているのです。新築や、メーター交換を済ませた家では「左端の大きいブレーカーが無い」ことがあります。その場合は、契約容量を超えるとメーター側で一度切れ、約10秒後に自動で復帰する動きになります。
さらに地域差もあります。関西・中国・四国・沖縄エリアは「最低料金制」で、もともとアンペアブレーカーがありません。アンペア契約があるのは北海道・東北・東京・中部・北陸・九州エリアです。「うちには契約ブレーカーが無いけど?」という方は、お住まいの地域がこのどちらかだから、というケースがほとんどです。
② 安全ブレーカー(配線用遮断器)
分電盤に小さくたくさん並んでいるスイッチが安全ブレーカーです。1つひとつが「キッチン」「エアコン」「リビング」など、部屋や回路ごとに分かれて担当しています。担当する回路だけで電気を使いすぎたり、ショート(短絡)が起きたりすると、その回路だけを止めます。
つまり「一部の部屋だけ電気が消えた」ときは、この安全ブレーカーが落ちています。家全体ではなく、落ちた回路だけの問題だと考えてください。
③ 漏電ブレーカー(漏電遮断器)
アンペアブレーカーの隣にある、少し大きめで「漏電」「テストボタン」が付いたブレーカーです。電気が本来の道から漏れている(漏電している)のを検知すると、家全体の電気を止めます。これは感電や火災を防ぐための、いわば最後の砦です。
3つの中で、この漏電ブレーカーが落ちたときだけは扱いが別格です。単なる使いすぎとはまったく意味が違い、「どこかで電気が漏れている=危険な状態」を知らせるサインだからです。詳しくは後述します。
落ちたブレーカー別・原因と正しい対処
家全体が消えた → アンペアブレーカー(使いすぎ)
家じゅうの電気が一度に消えたら、契約アンペアを超えて電気を使った可能性が高いです。原因は単純で、大きな電力を使う家電を同時に動かしすぎたことです。
対処はシンプルです。電子レンジ・ドライヤー・エアコン・IH・食洗機など、消費電力の大きい家電をいくつか止めてから、アンペアブレーカーのレバーを「入」に戻します。これで復旧することがほとんどです。
問題は「何度も繰り返す」場合。これは生活スタイルに対して契約アンペアが小さい、というサインです。後述する契約アンペアの見直しを検討してください。
一部の部屋だけ消えた → 安全ブレーカー(その回路の使いすぎ・ショート)
特定の部屋だけ消えたなら、その回路の安全ブレーカーが落ちています。多くはその部屋で電気を使いすぎたケースです。たとえばキッチンで電子レンジとケトルと炊飯器を同時に動かす、といった使い方です。
対処は、落ちた回路の家電をいくつか止めてからレバーを戻すだけ。ただし、家電を使っていないのに何度も同じ回路だけ落ちる場合は、その家電や配線のショート(内部の故障)を疑います。怪しい家電のコンセントを抜いた状態で戻して、落ちなくなればその家電が原因です。改善しないときは無理をせず、点検を依頼してください。
「漏電」のレバーだけ落ちた → 漏電ブレーカー【危険】
漏電ブレーカーだけが落ちているときは、どこかで電気が漏れています。感電・火災のリスクがあるため、原因がわからないまま何度も入れ直すのは絶対にやめてください。
漏電は、家電の内部故障や配線の劣化、水まわりへの浸水などで起こります。雨が多い梅雨〜夏は、湿気や浸水がきっかけで漏電が増える季節でもあります。次の手順で「どの回路が漏電しているか」だけは自分で特定できます。
漏電ブレーカーが落ちたときの正しい復旧手順
原因の回路を切り分ける手順です。修理ではなく「どこが悪いかを突き止める」ための作業だと考えてください。
- 分電盤のすべてのブレーカー(安全ブレーカー)を「切」にする
- アンペアブレーカーを「入」にする
- 漏電ブレーカーを「入」にする(復帰ボタンがあれば先に押す)
- 安全ブレーカーを1つずつゆっくり「入」にしていく
- ある回路を入れた瞬間に漏電ブレーカーがまた落ちたら、その回路が漏電しているとわかる
- その回路の安全ブレーカーだけ「切」のままにして、ほかは「入」に戻す(漏電回路以外は電気が使えます)
- その回路につながっている家電のコンセントを抜き、できるだけ早く電気業者に点検を依頼する
ここで大切なのは、原因の回路がわかっても、その先の修理は自分でやらないことです。配線や器具の漏電修理は電気工事士の資格が必要な作業で、無資格でいじるのは法律違反であると同時に、感電・火災の危険があります。「悪い回路を切り離して、プロに渡す」までが、ご家庭でやってよい範囲です。
夏にブレーカーが落ちやすい理由と「契約アンペア」の考え方
夏に家全体のブレーカー(アンペアブレーカー)が落ちやすいのは、エアコンが消費電力の大きい家電だからです。エアコンが動いているところに、電子レンジ・ドライヤー・食洗機などが重なると、あっという間に契約アンペアを超えてしまいます。
ざっくりした目安として、主な家電のアンペアはこのくらいです(使い始めはこれより大きくなります)。
- エアコン(冷房)……約5〜10A(運転開始時はさらに大きい)
- 電子レンジ……約15A
- ドライヤー……約12A
- IHクッキングヒーター……約20〜30A
- ドラム式洗濯乾燥機……約13A
たとえば30A契約で、エアコン・電子レンジ・ドライヤーを同時に使うと、それだけで30Aを超えてしまいます。「夕方に家族が一斉に家電を使うとよく落ちる」のは、これが理由です。
繰り返すなら「契約アンペアの見直し」
使い方を工夫しても頻繁に落ちるなら、契約アンペアを上げるのがいちばん確実です。契約アンペアの変更は、お住まいの電力会社に連絡するだけ。原則として工事費はかからず、無料で対応してもらえます(分電盤の交換が必要なケースなど、一部例外はあります)。
注意点は2つ。ひとつは変更は原則1年に1回までであること。もうひとつは、アンペアを上げると基本料金も上がることです(最低料金制の関西・中国・四国・沖縄エリアは、そもそもアンペア契約自体がありません)。「落ちないけれど料金は最小限に」というバランスで、いちばん電気を使う夏を基準に決めるのがコツです。
「どの家電が電気を食っているか」を調べる道具
「使いすぎで落ちるのはわかったけど、どの家電が原因かわからない」というときに役立つのが、コンセントに挟むだけで消費電力を表示してくれるワットチェッカー(消費電力計)です。1,000〜3,000円ほどで手に入り、電気代の高い家電を見つける節電にも使えます。資格も工事もいらず、コンセントに挿すだけなので安全に使えます。
自分でできること・電気工事士に任せること
電気屋として、線引きをはっきりさせておきます。資格がなくてもできるのは、あくまで「スイッチ操作」と「コンセントを抜く」までです。
自分でやってOK
- 落ちたブレーカーのレバーを戻す
- 家電を減らして使う・コンセントを抜く
- 漏電している回路の切り分け(上の手順)
- 電力会社へ契約アンペア変更を申し込む
電気工事士に任せる(無資格は法律違反)
- 配線・コンセント・ブレーカー本体の交換や修理
- 漏電している箇所の調査・修理
- 分電盤の増設・回路の追加
コンセントの増設や移設も電気工事士の資格が必要な作業です。「どこからが資格の要る工事なのか」は、コンセントを実際に移設した記事で作業例とあわせて解説しています。資格そのものに興味が出た方は、独学で第二種電気工事士に合格した体験談もあわせてどうぞ。
ブレーカー落ちを防ぐ4つの予防策
- 消費電力の大きい家電を同時に使わない……電子レンジ・ドライヤー・IHは時間をずらす(電気代が高い家電ワースト5も参考に)
- 回路を分散させる……同じ部屋(同じ回路)にタコ足で集中させない。タコ足配線の危険はコンセント発熱・火災の記事でも触れています
- 古い家電・傷んだコードは早めに交換……漏電・ショートの予防になります
- 夏前に契約アンペアを見直す……毎年落ちているなら、暑くなる前に上げておく
よくある質問
Q. ブレーカーが落ちた直後、すぐに入れ直してもいい?
A. アンペアブレーカー・安全ブレーカーなら、使っていた家電を止めてから入れ直して問題ありません。ただし漏電ブレーカーが落ちた場合は、原因を切り分ける前に何度も入れ直さないでください。漏電したまま通電するのは危険です。
Q. 何もしていないのに突然落ちた。なぜ?
A. 冷蔵庫やエアコンなど、自動で運転を始める家電が重なった瞬間に契約アンペアを超えることがあります。それでも頻発するなら、家電の故障や漏電の可能性があるので点検をおすすめします。
Q. ブレーカーが熱い・焦げ臭いときは?
A. すぐに使用をやめて電気業者へ。ブレーカーやコンセントの発熱・焦げ臭は、火災の一歩手前のサインです。詳しくはコンセントが熱い・焦げ臭いときの記事を参考にしてください。
Q. アンペアを上げれば絶対に落ちなくなる?
A. 使いすぎ(アンペアブレーカー)による停止は減ります。ただし、特定回路の使いすぎ(安全ブレーカー)や漏電(漏電ブレーカー)は契約アンペアとは別問題なので、それぞれの対処が必要です。
まとめ
ブレーカーが落ちたら、まず「どのブレーカーが落ちたか」を確認するのが第一歩です。家全体ならアンペアブレーカー(使いすぎ)、一部屋だけなら安全ブレーカー(その回路の使いすぎ)、「漏電」のレバーなら漏電ブレーカー(危険信号)。ここを見分けるだけで、やるべきことの大半が決まります。
使いすぎが原因なら、家電の使い方を工夫し、それでも繰り返すなら夏前に契約アンペアを見直す。漏電が原因なら、回路を切り分けたうえで無理をせず電気のプロに任せる——この線引きを守れば、ブレーカー落ちは怖くありません。暑い夏を、停電のストレスなく快適に乗り切ってください。
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