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物販の副業をしていると、年末が近づくころに「売れ残りの在庫は、確定申告でどう扱うのか」という疑問が出てきます。仕入れたお金は払っているのに、全部は経費にならない。この仕組みが分かりにくくて、棚卸しを後回しにしてしまう人は少なくありません。
この記事では、国税庁の資料に書かれている売上原価の考え方、年末の棚卸しの手順、棚卸資産の評価方法を、物販の副業に当てはめて整理します。個別の金額や有利不利の判断ではなく、一般的な決まりだけを扱います。
- 経費になる売上原価は、年初の在庫+その年の仕入れ−年末の在庫で計算する
- 年末の在庫は、12月31日現在で数量を数えて金額にする(棚卸し)
- 評価方法を税務署に届け出ていなければ、最終仕入原価法で評価する
- 事業所得でも雑所得でも、売上に対応する売上原価は必要経費になる。ただし、雑所得には「現金主義の特例」など、事業所得と違う取扱いがある
なぜ「仕入れた分」がそのまま経費にならないのか
物販の仕入れ代は、売れて初めて必要経費になります。国税庁のタックスアンサー(No.2210「必要経費の知識」)にも、必要経費に算入できる金額として「総収入金額に対応する売上原価」が挙げられています。
年末に売れ残っている商品の仕入れ代は、その年の売上に対応していません。そのため、その年の経費からは外し、翌年に持ち越します。この「売れ残りを外す」ための作業が棚卸しです。経費全般の考え方は副業で経費にできるもの一覧にまとめています。
売上原価の計算式
国税庁の「青色申告の決算の手引き(令和7年分)」では、売上原価を次の算式で計算するとしています。
数字はあくまで説明用の仮の例ですが、次のようになります。
| 項目 | 仮の金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 年初の棚卸高 | 10万円 | 前年末に売れ残っていた在庫(前年から繰り越し) |
| 年間の仕入高 | 80万円 | その年に仕入れた商品の合計 |
| 年末の棚卸高 | 20万円 | 12月31日に売れ残っている在庫 |
| 売上原価(経費) | 70万円 | 10万+80万−20万 |
仕入れに80万円払っていても、経費になるのは70万円です。残りの20万円分は、翌年の「年初の棚卸高」になります。
なお、「仕入高」には、その年の掛け買いなどでまだ代金を支払っていないものも含まれます。収支内訳書の書き方(令和7年分)にもその旨が書かれています。
年末の棚卸しのやり方
手引きに書かれている手順を、物販向けに並べ直すと次のとおりです。
- 時期:12月31日に行うのが原則です。年末に時間が取れないときは、前後した日に数えても差し支えありません。その場合は、12月31日と棚卸日の間の売上げ・仕入れから12月31日現在の数を計算し、その計算方法を明らかにしておきます。
- 数え方:商品の種類・品質・型などの別に、数量を実際に調べます。
- 金額にする:数量に単価(後述の評価方法)を掛けて、年末の棚卸高を出します。
- 記録を残す:数えたときのメモなどの原始記録は、棚卸表と一緒に保存します。
商品出入帳などで毎日の在庫数を記録し、毎年一定の時期に実地で確かめている場合は、その帳簿から年末の棚卸高を計算して、実地棚卸しを省略できるとされています。
数える対象は商品だけではありません。まだ使っていない梱包材や事務用品などの消耗品も、棚卸しの対象に挙げられています。ただし、通常の年と比べて特に増えていない消耗品は、棚卸しを省略しても差し支えないとされています。
在庫の金額(評価)はどう決める?
在庫の単価は、あらかじめ税務署に届け出た評価方法で決めます。手引きには、届け出る方法の例として先入先出法・総平均法・売価還元法・低価法などが挙がっています。
届出をしていない場合は、最終仕入原価法で評価することになります。算式は次のとおりです。
同じ商品を何度か違う単価で仕入れている場合は、一番新しい仕入単価を使うということです。
評価方法の届出について
国税庁の手続案内(A1-17)によると、棚卸資産の評価方法の届出は、新たに事業を開始した事業所得者などが対象で、事業を開始した日の属する年分の確定申告期限までに提出します。届け出なかった場合は最終仕入原価法が適用されると、同じ案内に書かれています。
この届出書は、新たに事業を始めたときの届出の一つとして、個人事業の開廃業等届出書や青色申告承認申請書と並んでタックスアンサー(No.2090)に載っています。開業届の書き方は開業届の出し方【税務署に行かずオンラインで10分】で解説しています。
売れにくくなった在庫の扱い
手引きには、災害で著しく傷んだものや、棚ざらし・流行遅れで著しく陳腐化したものなど、通常の価格では売れない在庫について、12月31日現在の処分可能価額で評価することもできるとあります。通常の在庫と区別して扱うのが前提です。
事業所得と雑所得で、扱いはどう変わる?
副業の所得は、事業所得になる場合と、業務に係る雑所得になる場合があります。国税庁の所得税基本通達35-2の注には、事業所得と認められるかどうかは、社会通念上、事業と称するに至る程度で行っているかで判定すると書かれています。また、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得に該当するとされています(収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く)。
どちらに当たるかは、活動の実態で判断されます。ここでは、一般に説明されている違いのうち、棚卸しに関わるところを表にします。
| 事業所得 | 業務に係る雑所得 | |
|---|---|---|
| 売上原価 | 必要経費になる | 必要経費になる(No.2210) |
| 記帳 | 記帳と帳簿の保存が必要(No.2080) | 前々年の収入が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類の保存が必要 |
| 計算の考え方 | 年末の棚卸しで売上原価を計算する | 前々年の収入が300万円以下なら、その年に収入した金額・支出した費用で計算する特例を選べる(確定申告書にその旨の記載が必要) |
| 赤字の扱い | 他の所得と損益通算できる場合がある | 他の所得と損益通算できない |
雑所得で前々年の収入が1,000万円を超える場合は、収支内訳書などの添付が必要になります(No.1500)。
雑所得の現金主義の特例を使うかどうか、自分の活動がどちらに当たるかは、金額や状況によって変わります。迷うときは、税務署の相談窓口か税理士に確認してください。
申告書のどこに書く?
青色申告決算書や収支内訳書には、「売上原価」の欄があります。収支内訳書(一般用)の書き方(令和7年分)では、次の項目を記入するとされています。
- 期首商品(製品)棚卸高:その年の1月1日現在の棚卸高
- 仕入金額:その年の仕入れの合計(未払いの掛け買いも含む)
- 期末商品(製品)棚卸高:その年の12月31日現在の棚卸高
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトを使うと、これらを入力すれば売上原価が自動で計算されます。
在庫を自分で使ったとき
手引きには、棚卸資産を家事のために消費したり贈与したりした場合は、その分も収入金額になると書かれています。原則は通常の販売価額ですが、仕入価額(仕入価額が通常の販売価額の70%より低いときは70%の金額)で収入金額を計算しても差し支えないとされています。仕入れた商品を自分で使ったときは、帳簿に記録しておきましょう。
よくある質問
Q. 年末に在庫が1つも残っていなければ、棚卸しは不要ですか?
A. 在庫がゼロなら、年末の棚卸高は0円です。ただし、翌年の「年初の棚卸高」も0円になるので、そのことを帳簿で確認しておきます。梱包材などの消耗品が残っていれば、棚卸しの対象になる場合があります。
Q. 棚卸しの記録はいつまで保存しますか?
A. 国税庁のNo.2080では、決算に関して作成した棚卸表その他の書類は5年間の保存とされています。記帳制度に基づく帳簿は7年間です。
Q. 会計ソフトを使えば、棚卸しは自動でやってくれますか?
A. ソフトは計算と書類づくりを助けてくれますが、12月31日の在庫の数と単価は自分で用意する必要があります。数え方や評価方法を決めてから、入力する流れになります。
確定申告をラクにするなら
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら、銀行口座やカードを連携して経費を自動で仕分けし、確定申告書まで自動で作成できます。棚卸しの数字を入力する場所も、画面の案内に沿って進められます。
まとめ
- 売上原価は「年初の在庫+年間の仕入れ−年末の在庫」で計算する
- 年末の在庫は12月31日現在で数え、数えた記録を棚卸表と一緒に5年間保存する
- 評価方法を届け出ていなければ最終仕入原価法。最終仕入原価法以外にしたい場合は、事業開始年分の確定申告期限までの届出が要る
- 事業所得と雑所得では、記帳や計算の特例が違う。迷うときは税務署か税理士に確認する
あわせて読みたい
出典(2026年10月25日に確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」
- 国税庁「令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方」
- 国税庁 手続案内 A1-17「所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続」
- 国税庁 所得税基本通達35-2(雑所得の例示)
※本記事は一般的な制度の説明です。個別の事情での取扱いは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。制度は改正されることがあります。
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