自宅のWi-Fiルーター、初期設定のままにしていませんか|スマート家電を守るセキュリティ設定を電気屋が解説

スマホ・PC・格安SIM

「工事不要でコンセントに挿すだけ」「アプリを入れればすぐ操作できる」——Wi-Fiルーターもスマート家電も、特別な知識がなくても使えるところまで手軽になりました。筆者(でんきや慎ちゃん)は家電量販店で通信機器やスマート家電の設置を担当してきましたが、現場でよく感じるのは「つないだ後の設定」まで気にする人は驚くほど少ないということです。

この記事では、警視庁・総務省・IPA(情報処理推進機構)が実際に出している注意喚起をもとに、自宅のルーターとスマート家電を守るために今すぐできる設定を、設置のプロ目線で整理します。

「繋げば終わり」ではない|実際に出ている公的な注意喚起

「ルーターやスマート家電のセキュリティ」と聞くと、大げさに感じる人もいるかもしれません。しかし、家庭用ルーターが実際にサイバー攻撃に悪用された事例は、公的機関から繰り返し注意喚起が出ています。

初期パスワードのまま乗っ取られた「Mirai」の教訓

IPAによると、2016年に「Mirai」と呼ばれるマルウェアが、ルーターやネットワークカメラなどのIoT機器に「root」「password」といった工場出荷時のままの単純なIDとパスワードでログインを試み、大量の機器を乗っ取って大規模なDDoS攻撃(標的サーバーに一斉に負荷をかけて機能停止させる攻撃)を引き起こしました。同じ時期に、初期パスワードのままだったネットワークカメラの映像が、本人の知らないうちに海外サイトで公開される被害も起きています(IPA「ネットワークカメラや家庭用ルータ等のIoT機器は利用前に必ずパスワードの変更を」より)。

警視庁が確認した「知らないうちに設定を変えられる」手口

警視庁サイバー攻撃対策センターは、家庭用ルーターがサイバー攻撃に悪用され、「初期パスワードの変更」「ファームウェアの更新」といった従来の対策だけでは対応しきれない手口を確認したとして、注意喚起を行っています。攻撃者がルーターを外部から不正に操作して機能を有効化し、一度設定を変更されると、そのままでは不正な状態が解消されず、継続的に悪用され続けてしまうというものです。対応として、次の点を定期的に確認するよう呼びかけています(警視庁「家庭用ルーターの不正利用に関する注意喚起について」より)。

  • 見覚えのない「VPN機能」「DDNS機能」「外部からルーターの管理画面に接続する設定」が有効になっていないか
  • VPN機能に見覚えのないアカウントが追加されていないか
  • 見覚えのない設定があった場合は、ルーターを初期化→ファームウェアを最新化→パスワードを複雑なものに変更する

総務省・NICTの「NOTICE」プロジェクト

総務省と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は2019年2月から「NOTICE」という取り組みを続けています。これは、容易に推測できるID・パスワードの組み合わせ(約600通り)を、ルーターやネットワークカメラなどのIoT機器に対してインターネット側から実際に入力してみて、サイバー攻撃に悪用されるおそれのある機器を特定し、契約しているプロバイダを通じて利用者に注意喚起する仕組みです。令和6年度以降は、ファームウェアの脆弱性やマルウェア感染機器の調査も対象に加わっています。

つまり、「初期設定のまま」のルーターは、悪意を持った特定の人だけでなく、機械的なスキャンによっても見つかり得る状態にあるということです。

今すぐやる基本設定|総務省が示す5つのポイント

総務省は「自宅Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(令和7年2月版)で、セキュリティ対策として次の5つのポイントを示しています(総務省「無線LAN(Wi-Fi)の安全な利用(セキュリティ確保)について」より)。

ポイント 内容
1. セキュリティ方式 「WPA2」または「WPA3」を選択する
2. パスワード 第三者に推測されにくいものにする
3. サポート期限 サポート期限内のWi-Fiルーターを利用する
4. ファームウェア 常に最新の状態に更新する
5. 設定確認 ルーターの設定を定期的に確認する

この5つのうち、現場で見落とされがちなものを順番に見ていきます。

1. 管理画面のパスワードを変える(Wi-Fiのパスワードとは別物)

ここでよくある勘違いが、「Wi-Fiに接続するときのパスワード(暗号化キー)」と「ルーターの設定画面にログインするためのパスワード」は別物だという点です。Wi-Fi用のパスワードは初期設定時に変えていても、管理画面側のパスワードは「admin」「password」のまま、というケースを現場で何度も見てきました。管理画面に入られると、Wi-Fiパスワードの確認どころか、前述のVPN機能なども自由に設定変更されてしまいます。取扱説明書に記載の初期パスワードは、必ず両方とも変更しておきましょう。

2. WPA3が選べるなら選ぶ(WPA2でも最低限クリア)

暗号化方式は「WPA2」または「WPA3」を選び、古い「WEP」方式が残っていないか確認します。WPA3はWPA2より新しく、より強固な暗号化とパスワード推測への耐性を持つ方式です。ルーターとスマート家電の双方がWPA3に対応していれば選択し、対応していない機器がある場合はWPA2を使います。設定画面の「無線設定」「セキュリティ」といった項目から確認できます。

3. ファームウェアの自動更新をオンにする

ファームウェアとは、ルーター本体を動かす基本ソフトのことです。メーカーは脆弱性が見つかるたびに修正版を配布していますが、手動更新の設定のままだと、存在に気づかず何年も放置されがちです。近年もバッファロー製ルーターの脆弱性がIPA・JPCERT/CCから公表され、最新版ファームウェアへの更新が呼びかけられた例があります。多くの機種は管理画面から「自動更新」を有効にできるため、対応しているなら必ずオンにしておきましょう。

4. WPS(ボタンで簡単接続する機能)は無効化を検討する

WPSは、ボタンひとつやPINコード入力でWi-Fi接続を簡単にする機能です。便利な一方、PIN方式には総当たり(ブルートフォース)攻撃で突破されうる脆弱性が以前から指摘されており、メーカー各社もPIN方式の無効化やファームウェア更新による対処を案内しています。初期接続がすでに済んでいる家庭では、設定画面からWPS(特にPIN方式)をオフにしておくと安心です。

スマート家電の守り方|ゲストSSIDで「分けて」つなぐ

ルーター本体の設定を固めても、後から追加していくスマート家電(スマートプラグ、見守りカメラ、スマート照明など)が弱点になることがあります。IoT機器はパソコンやスマホほど頻繁にセキュリティ更新が行われない製品もあり、初期パスワードのまま使われがちだからです。

ゲストSSIDでネットワークを分ける

多くのルーターには、メインのWi-Fiとは別に「ゲストSSID」を作る機能が付いています。もし家庭内のスマート家電1台が乗っ取られても、パソコンやスマホがつながるメインのネットワークとは切り離されているため、被害が広がりにくくなります。スマート家電をまとめてゲストSSID側に接続する運用は、実質的にお金をかけずにできる対策です。設定画面の「ゲストネットワーク」「マルチSSID」といった項目から作成できます。

UPnPは「必要なければ切る」が基本

UPnP(Universal Plug and Play)は、ゲーム機や一部のスマート家電が自動でポートを開放できるようにする機能です。設定の手間が省ける一方、外部からアクセスできる「入り口」を機器側の判断で勝手に増やしてしまう性質があるため、使っていない・必要性がわからない場合は無効化し、どうしてもポート開放が必要なときは手動で行うほうが安全です。

買う前に「サポート期間」を確認する

スマート家電を選ぶときは、価格や機能だけでなくメーカーのサポート期間(ファームウェア更新がいつまで行われるか)も確認しておきたいポイントです。スマートプラグの活用については、以前スマートプラグは節電になる?待機電力カット・消し忘れ対策の実力と「使ってはいけない家電」を現役電気屋が解説でも触れましたが、便利さと合わせて「対応している家電の範囲」「発火リスクのある家電への使用可否」も含めて確認しておくと安心です。

中古ルーター・古いルーターの引退判断

「まだ壊れていないから」という理由だけでルーターを使い続けるのは、実はリスクを抱えたままにしている状態かもしれません。判断の目安は次の通りです。

状態 目安
メーカーサポートが終了している 新しい脆弱性が見つかっても修正ファームウェアが配布されない=買い替え時
製造から5〜10年以上経過 WPA3非対応など暗号化方式が古い可能性が高い
中古で入手したルーター 前の持ち主の設定が残っている場合があるため、必ず初期化してから使う
ファームウェアの更新履歴が長期間ない メーカーの製品ページでサポート状況を確認する

警視庁も、メーカーのサポートが終了したルーターは脆弱性を改善するファームウェア更新が行われずセキュリティリスクが高まるとして、買い替えの検討を呼びかけています。「壊れていないのに買い替えるのはもったいない」と感じるかもしれませんが、セキュリティ面では「サポート終了=買い替えのタイミング」と考えたほうが安全です。次のルーターを選ぶ際は、以前まとめたWi-Fiルーターの選び方2026年版|現役電気屋が「IPv6対応と部屋の広さ」から選ぶ方法を解説も参考にしてください。

なお、この記事はセキュリティ設定が本題ですが、「そもそも通信が遅い」という悩みは原因が別にあることも多いです。速度の切り分け方はWi-Fiが遅い原因はルーター?プロバイダ?切り分け方で解説しているので、あわせてチェックしてみてください。

よくある疑問FAQ

Q. Wi-Fiのパスワードを複雑にしていれば、管理画面のパスワードは初期設定のままでも大丈夫ですか?

いいえ、別々に変更が必要です。Wi-Fi用パスワードと管理画面ログイン用パスワードは異なる項目です。管理画面に不正ログインされると、VPN機能の有効化など、より深刻な設定変更をされる恐れがあります。両方とも初期パスワードから変更しましょう。

Q. ファームウェアの自動更新は、どこで設定できますか?

機種によって呼び方や場所は異なりますが、多くはブラウザで管理画面(多くの場合192.168.1.1や192.168.0.1などのアドレス)にログインし、「システム」「メンテナンス」「ファームウェア更新」といった項目から確認できます。詳細な操作は、お使いの機種の取扱説明書やメーカー公式サイトのサポートページを確認してください。

Q. WPSを無効化すると不便になりませんか?

新しい機器を接続する頻度が低い家庭では、無効化してもほとんど困りません。接続したいときだけ一時的にオンにし、終わったらオフに戻す運用でも十分です。日常的にボタン接続を多用する場合は、せめてPIN方式だけでも無効化しておくと安心です。

Q. スマート家電を全部ゲストSSIDにつなぐと、スマホから操作できなくなりませんか?

アプリがインターネット経由(クラウド経由)でスマート家電を操作するタイプなら、スマホとスマート家電が同じネットワーク内になくても操作できることが多いです。ただし機種によっては同一ネットワーク内での操作が前提のものもあるため、購入前・設定前に対応方式を確認しておくとスムーズです。

Q. 中古のルーターを譲り受けました。そのまま使っても平気ですか?

おすすめしません。前の持ち主の設定(管理画面パスワードやVPN設定など)が残っている可能性があります。使い始める前に必ず「初期化」を行い、そのうえで管理画面パスワード・Wi-Fiパスワードを自分で設定し直してから使いましょう。メーカーのサポートが終了していないかも合わせて確認してください。

まとめ

ルーターもスマート家電も「つなげば終わり」ではなく、初期設定のまま使い続けること自体がリスクになり得ます。今日からできることとして、①管理画面パスワードとWi-Fiパスワードの両方を変更する、②WPA2/WPA3を確認しファームウェア自動更新をオンにする、③スマート家電はゲストSSIDで分けてつなぐ、④サポートが終了した古いルーターは買い替えを検討する、の4点を押さえておけば、被害に遭う確率をぐっと下げられます。

特別な工事も追加費用も不要で、設定画面から数分でできることばかりです。この週末にでも、一度ルーターの管理画面を開いてチェックしてみてください。

※本記事の内容は執筆時点の情報です。設定方法や機能名は機種・メーカーによって異なるため、実際の操作は取扱説明書やメーカー公式サイトをご確認ください。また、注意喚起の内容は総務省・警視庁・IPAなど公的機関の最新情報も随時ご確認ください。

この記事が役に立ったら「いいね」で応援お願いします!

この記事についてのご質問・お問い合わせ

    タイトルとURLをコピーしました